普段なかなかできない荷物の整理をしていると、懐かしいノートが出てきた。
まだ東京で編集者としてバリバリ働いていた頃、仕事は好きだし、任される仕事も責任も増えてきて、「人生、仕事に捧げます」状態になりかけていた。
このままで行くと、子供の頃から夢見てた 海外生活なんてありえないなあ、と終電に揺られながら、ぼんやり考えていた。
故郷では、やはり仕事人間だった父が末期癌の闘病中で、いつ緊急帰省の呼び出しがあってもおかしくなかった。日本からはいずれにしても、しばらく出られない。
そんなとき、仕事帰りに何気なく買った青いノート。それを留学に向けての準備ノートにした。いつになるかは分からないけど、なぐさめにはなった。
留学についての情報や、海外転居に向けての準備カレンダー、離職するまでにやるべき仕事リスト等々、そのノートの書き綴っていくことは 夢を実現するための、励みにもなり、あるいは、現実の課題と向き合うことでもあった。
実際に日本を飛び立つのには、 ノート購入から2年ほどしてからだった。その間、父とのお別れもあった。
この命をあたえてくれた父への最大の恩返しは、自分の人生を最大限楽しむことだと決め、 ある日、一人日本を旅立った。
青いノートを道連れに。
そんなノートを久しぶりに開けば、自分の英語力のなさにびっくりだ。海外で困らないように、 挨拶の仕方、空港でのやり取り、日本への手紙の書き方、 必死でいろんな情報を書き写していたあの頃。
自分がいかに心細く、 英語が出来なかったかを 思い知らせてくれる。だから、このノートを開くたび、心が引き締まる。
どんなに英語が苦手な学生がいても、絶対に見放したり、あきらめてはいけない。
それはあの頃の自分だ。
そのたびに、青いノートが教えてくれる。